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溜め息

祐羽の教室は一年生という理由で四階にある。 手摺りに掴まりゆっくり上がる友人に、純弥は一層心配顔を見せた。 保健室へ促されるが、病気ではないのだしベッドで寝転んで白い天井だけを見上げている怖さもある。 何も考えずにいられるはずもない。 きっと九条にされた事を思い出すに決まっていた。 今でもこうして悶々としているのだから…。 出来れば少しでも忘れていたい。 「お~月ヶ瀬、賀川、はよ~!!」 「おはよう、小野くん」 「~はよ」 教室に入ると先に来ていた友人の小野 昌磨(おの しょうま)が、自分の席を立ち上がって近づいてきた。 賀川より少し背が高く遊ばせた髪型がとても似合っている。 それに見た目通りに明るくムードメーカーなイケメンだ。 それを言うと賀川も同じ様なタイプであるが、小野の場合はクラスどころかアチコチで目立っている。 賑やかなので賀川からは、よく煩いと言われては小さな口喧嘩が勃発していた。 「あれっ?月ヶ瀬どうかした?」 「えっ…あ、なんでもないよっ!」 祐羽はそう訊かれると、取り繕った笑顔を浮かべて見せた。 「なんか寝不足らしいぜ?」 慌てる祐羽の横で賀川が口を挟む。 その答えに小野が思案げに祐羽の顔をじっと見つめてきた。 「ふぅ~ん、何して寝不足になったんだよ?」 「それは…」 理由は絶対に言えない。 そんな祐羽の気持ちを知ってから知らずか、小野がコロッと表情を変えた。 「まぁいいや。とにかく今日は無理すんなよ?」 「あ、ありがとう…」 そこで話が途切れると、祐羽はホッとしつつ自分の席へと向かった。 バレる事はないと分かっていても、ドキッとしてしまう。 絶対に知られてはならない秘密。 とにかく早く帰りたい…。 体も怠いし隠し事をしている心労もある。 祐羽は来たばかりなのに、机へ突っ伏すと溜め息を吐いた。 その姿を見て「よっぽど眠いんだな…」と賀川が言った。

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