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変化
そんな感じで2週間と少しが過ぎた。
なんで自分があんな目に遇わなければならなかったのか?
性的に疎く、もちろん今まで誰とも付き合った経験もないし、当たり前だがエッチどころかキスの経験も無かった。
それが突然キスを奪われ、同じ男に犯されたショックはいつまでも尾を引く。
忘れたい自分と忘れられない自分。
学校や家でも頭の中に出てきて、そして夢の中にも出てくる九条。
無理に抱かれた慣れない体は、あの時は熱よりも痛みの感覚の方が大きく、また同じ事が起きたらどうしようと恐怖が過る。
それと同時に九条のあの瞳も思い出すのだ。
「…怖いけど…優しくもしてくれてんだよね…九条さん。何で僕だったの…?」
夜寝る前、自室のベッドで必ず繰り返すその疑問。
それも答えの出ないそれに、次第と自問も少なくなっていった。
一度間違いで抱いた程度のなんの変哲もない男子高校生に、もう特別用も無いだろう。
九条もきっと祐羽を抱いた後に後悔をしたのかもしれない。
「 だから、優しくしてくれたのかな?……………、」
きっと九条を忘れられはしない。
けれど忘れなければならないし、忘れさせて欲しい。
幸いな事に連絡は無いし、大人の男と体を結んだなんて誰にも話せない禁忌だ。
忘れなければならない事実なのだから…と。
願いが届いたのかどうか、そのまま本当に何も起きることはなかった。
祐羽は以前の様に、変わりない生活を送る事が出来て、普通の日々に感謝した。
そんな日常が変化を見せたのは、薬を塗り続けたお陰もあってすっかりあの時の痛みも引いた頃だった。
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