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譲歩
条件?
一体どんな条件だというのか、祐羽は不安に顔を曇らせた。
「条件…それって何ですか?」
「今日は泊まらなくていい。ただし週末は泊まれ」
「週末?!」
それは毎週という事だろうか?
「あと平日でも俺に時間が出来れば迎えをやる。その時も、だ」
九条は腕を組んで決定事項だと、当然の顔で言い放った。
毎週この家に泊まる?
平日でもこの人の都合によっては、ここへ来なければいけないなんて…。
「平日泊まるのは無理です!!両親も心配するし、部活で遅くなるし。あと週末、日曜日でも部活あるんです!」
祐羽がそう必死で言い募ると、九条が顎に手を当てて一瞬だけ考える素振りを見せた。
それから直ぐに頷いた。
「それなら平日は泊まらなくていい。そのかわり週末は絶対だ」
これは譲らないと怖い顔を見せる。
それに一瞬怯んだが、祐羽はだけどと言葉を続けた。
「でも…部活があるんです」
部活は大切だ。
それは嘘ではないが、これを理由に宿泊は無しに流れを持って行きたいのも事実だった。
祐羽がそう言うと、九条の眉が不機嫌にピクリと上がった。
「っ!!」
言いすぎただろうか…?
首を竦めて見つめていると、九条が小さく舌打ちする。
「…休みにも部活してんのか」
「はい」
もしかして宿泊の条件が無くなるのでは?と期待した祐羽は、次にその甘さを知る事になった。
九条は直ぐにスマホを取り出すと、誰かに連絡を入れる。
「俺だ。月ヶ瀬祐羽の高校のバスケ部に、日曜の部活を休ませるようにさせろ。今週末からだ。あと、平日の部活も時間を確認して、あまり遅くまでさせるな。…あぁ、そうしてくれ」
それだけ言うと、九条は通話を終わらせた。
部活という理由が消えてしまう可能性に、祐羽は希望が潰えた気になって、益々顔色を悪くした。
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