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選び放題
なんだか自分でも分からない気持ちでドキドキしつつ見ていたら、九条からリモコンが戻される。
「あ」
そこで衛生に切り替えられているのに気づく。
番組一覧が映し出されていて、専門チャンネルが羅列されていた。
その中から選べということだ。
さっきとは違って色々とある。
自然に特化したチャンネル、映画、ドラマ、時代劇、スポーツ。
その他にもお笑い専門から総合バラエティー、アニメ、音楽にニュースと幅広い。
加えて海外専門チャンネルもある。
「え…と…」
どれにしよう…。
九条の趣味が分からず悩む。
この九条がお笑いやアニメを観るのだろうか?という疑問が頭を過る。
好きだとしたら似合わない。
似合わなすぎる。が、一般人と同じ感覚だという理由から逆に親近感が湧くだろう。
ここは九条の機嫌をとるためにも、そしてそんな姿も知りたい好奇心から祐羽は何を観たいか探る事にした。
今も緊張して隣に座ってはいるが、リモコンのやり取りで九条とのコミュニケーションが取れる状況と判断しての試みだ。
もう少し会話が成り立てば、色々と思いを伝えやすくなるのでは?という考えからだった。
少しでも九条の事を知りたい。
それが今の祐羽が出来る九条から解放される為の第一歩だった。
ゴクッと唾液を飲むと、祐羽は九条に話しかけた。
「え…と、九条さん」
「…」
何だ?という風に九条が視線を向けてくる。
「九条さんは、…何が観たいですか?」
訊けた!と内心ホッとする。
そんな祐羽に九条はサラッと答える。
「お前が観たい番組でいい」
「は、い…」
それでは意味がない。
ガッカリしている祐羽は次の言葉に驚いた。
「その為に契約した」
「…え?」
「…眞山に指示しておいた」
待って、待って、待ってください!…それって…。
僕の為に…?
「不足か?」
「いっ、いえっ大丈夫です!!十分です!!」
慌てて首を全力で振った。
僕の為にとか…何でなの?どうして?
一体何考えてるのこの人?!
分からないよ~。
緊張とは別の意味で、一瞬にして疲れが出てしまった祐羽だった。
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