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料理上手
九条から声を掛けられて、ずっと見ていた事に改めて気づく。
すんなり視線が合ったからだ。
「来い」
「あ、はい…」
祐羽は驚くと同時に素直に頷くと、戸惑いつつもトコトコとダイニングテーブルへと向かった。
逆らう理由も勇気も無い。
そして何より、九条の作った料理が気になったからだ。
「え!?」
テーブルまで来た祐羽は、そこへ並べられた料理を見て思わず目を丸くした。
「凄…!」
テーブルには、九条が作ったとは思えない様な彩り良い綺麗に盛られた料理が並んでいたからだ。
てっきり豪快男の料理というのを想像していたのだが。
これを九条さんが…?
「座れ」
「あ、…」
そう言われて自分が立ちっぱなしだったことを思い出して慌てて座る。
どうやらイタリアンの様だ。
並べられた料理は見た目も豪華で綺麗で、家やその辺の店で食べた事のある物とは訳が違う。
イタリアンを食べた事はあってもせいぜいパスタやピッツァくらいで、実際に祐羽が食べた事のない料理が殆どだ。
殆どというのは間違いかもしれない。
見た目からして全く同じ物を食べた事があるとは言えないと思ったからだ。
これを九条が作ったとは、驚くなという方が無理だろう。
「…凄い」
祐羽はもう一度思わず呟いた。
座った祐羽の目の前にはご馳走が並んでいる。
カトラリーがセットされ側に置かれた繊細なグラスには水が注がれている。
白を基調とした輝く皿に載せられた料理は、目からも美味しさを伝えてくる。
トマトとチーズが色鮮やかなカプレーゼに不思議な色合いのポタージュ、それから美味しそうなペンネカルボナーラ。
トルタサラータは焼き色も食欲を誘い、湯気の出ているリゾットからは濃厚なチーズの香りが祐羽の鼻孔を擽りお腹が鳴りそうだ。
そんな彩りも薫りも良い料理は、ダイニングテーブルの上にある雰囲気の良いライトに照らされて、ここが高級イタリアンの店と勘違いさせる程だった。
「食っていいぞ」
祐羽が皿の上を行ったり来たりで見つめていると、少し呆れた様な九条の声が食べることを促した。
「あっ、ありがとうございます。…いただきます」
祐羽は手を合わせると、戸惑いながらカトラリーを手にした。
※前回の突発料理アンケートご参加ありがとうございました。
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