自宅へ着くと、直ぐ様ドアから中瀬が降り続いて祐羽が車から降りた。 当然の様に着いてこようとする中瀬に、慌てて制止をかける。 「あっ、あのっ、いいです来てくれなくて！」 車は自宅の真ん前だ。 小さな門扉を開いて数歩先には玄関扉がある。 まさか迷子になる距離でもないし、親にはもう会ってほしくない。 両親は中瀬を息子の先輩だと信じて疑っていないので、これ以上関わりあって親密になってもらっては困る。 ここではない場所で中瀬達に会って、危ない目に巻き込まれる可能性を考えると絶対に今後絶対に会わせたくない。 そして、これから両親に本当の事を話するのだから中瀬と境に気を使ってもらうのは心苦しい。 優しくしてくれたのに、ごめんなさい…。 「じゃぁ、あの。ありがとうございました」 祐羽が頭を下げると、中瀬が笑顔を見せた。 「いやいや、仕事だしね～。月ヶ瀬くんの方が社長と一緒で気ィ使ったっしょ？」 「えぇっ…と」 メチャクチャ気を使いましたとは、さすがに九条の部下を前に言えない。 「疲れただろうし早く寝ろよ～！あ」 思い出した！と中瀬が耳に口を寄せてきた。 「明日から２日は社長出張だから、ゆっくり休めるよ～」 アイドル顔負けのウィンクをして中瀬は「バイバーイ」と車に乗ると帰って行った。 祐羽は車が曲がって見えなくなるまで見送ると、溜め息をひとつ付き玄関のドアを開けた。