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第196話 偶然か否か
予想外の展開に驚きつつも新しく得た情報は大きかった。
問題はこれからどうするか、という事だ。
そこが悩みどころだった。
「 九条さんの会社に違いない事は分かったけど、お父さんの会社と提携だなんて凄い偶然」
それから祐羽は、まてよ。と小首を傾げた。
「…偶然なのかな?」
もしもこの提携が人質だとしたら?
祐羽にこれから連絡をしたら必ず家に来いと無理難題を押しつけた九条が、ダメ押しとしてこの方法をとっていたとしたら…まさかと思うが十分有り得る話だった。
話を聞くと喉から手が出るほど欲しかった提携だが、ずっと断られ続けていた。
それが父に変わった途端に急に承諾して貰えたなんて、タイミングも含めて偶然にしては出来すぎていないだろうか?
新たに担当者となった亮介が、祐羽の父親と知っての契約話だとしたら?
九条との縁を切りたい祐羽は今夜、今までの事を話すつもりだった。
両親に話して一緒に解決策を考えて貰い、警察へ相談に行くという流れが頭に既に出来上がっていた。
それが、自分が相談して警察へ行った事が原因で、父親の大切な大型契約が頓挫してしまったら?
そうなったら、あんなにも張り切って遅くまで仕事をしていた亮介。
その努力は水の泡。
笑顔で頑張っていた顔は絶望に落ち込むだろう。
それだけはしたくない…。
あれだけ息巻いていたはずの勢いがみるみる萎んでいく。
本当に九条は分かっていて父との交渉を承諾したのだろうか?
それが本当だとしたら、九条への絶縁状を今すぐ叩きつける訳にはいかない。
そう考えると頭の中は悶々とするばかり。
こうしていても確かめる術は無いし、どうしたものか。
「あ。そうだ!中瀬さんに訊いてみればいいんだ!!」
不意にいいアイディアが閃いた祐羽は、パソコンを閉じると、充電の終わったスマホを手に取った。
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