もういいだろうか？ タップして10秒ほどしてから祐羽はソッと目を開けた。 薄目で確認すると文字が見える。 当たり前だが何かメッセージが送られて来ていた。 一旦目を閉じた祐羽は今度こそ一気に目を見開いた。 メッセージは昨夜と今日の昼で、合計３回入っている。 １度目の日時を確認すると、九条と分かれて祐羽が帰宅し疲れてあっという間に眠った後のものだった。 メッセージはというと…「え～っと？」と祐羽は目で文字を追った。 【福岡へ行く 明後日戻る】 「え？」 バクバクと音を立てていた心臓だったが、あまりに拍子抜けする内容に一気に落ち着いてくる。 その内容を理解出来ず祐羽はキョトンとしてしまった。 九条は、明後日まで不在にするという事を知らせたかったらしい。 伝え忘れたと思ったのだろうか？ 別に知らなくても良かったし、居ないならそれに越したことはないのだけれど、と思ってしまう。 自分としては身勝手で横暴なヤクザとは早く縁を切りたい。 「仕事で福岡…え～っと？」 それとも仕事で不在を告げる他に、何か意図するものでもあったのだろうか。 出張だから何だというのだ。 お陰でこちらは心休まるというものだ。 そしてもうひとつは翌日。 つまりは今日の昼、祐羽が学校で昼休憩をしている時間帯のものだ。 【連絡しろ】 「ううっ、何それ？偉そうなんだけど…まぁ九条さんは元からそんな感じだし強引で命令口調だけど…」 連絡しろ、とは？ 何の用事があって連絡しないといけないのだろうか。 九条は仕事で福岡へ行っているのだから、一高校生に構っている暇はないだろうし祐羽も関わりたくはない。 仕事が忙しいはずだろうに、一体何だというのか。 そしてその少し後には【通話キャンセル】の文字が…。 どうやら電話を掛けてきていたらしい。 「えっ、ちょっと待って…。これって、」 祐羽は冷や汗が出るのを感じた。 この展開はもしかしなくても、こちらから連絡をしないといけないという事なのではないだろうか。 見なかった事にしたいのは山々ではあるが、全くの無視も出来ないうえに、諦めて既に開いてメッセージを確認してしまった。 九条のアプリ画面には、祐羽がメッセージを見たという『既読』の通知が届いている筈だ。 それなのに連絡しなかったとなると、明日九条が仕事を終えて出張から戻って来た時に恐ろしい結末が見える。 「ヒィッ、それは怖い嫌だムリムリ」 ここは覚悟を決めて当たり障りのないメッセージでも送っておこう。 そう思って文章を考え始めた時だった。 ﾌﾞｰﾌﾞｰﾌﾞｰﾌﾞｰ 「！！！！」 突如スマホが振動すると共に画面には大きく【九条】の文字が表示されていた。 そしてまさかの相手からの通話連絡に、祐羽は驚きに体を盛大に震わせた。