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第221話 馬子にも…

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」 中に入った瞬間に店員からの挨拶がされる。 それと同時に九条の後ろに立つ自分へと視線が一斉に向けられると、祐羽は恥ずかしさから顔を赤くした。 何しろ店内は外の造りから想像してはいたが、目映いばかりに光り輝いていた。 床もツルツルならシャンデリアもキラキラ、そして迎え入れる店員も皆が身だしなみに気をつけているのだろう輝いて見えた。 そんな店内でキョロキョロする祐羽と違い慣れているらしい九条が店員に指示を出す。 「頼んでいた物をコイツに」 「はい、畏まりました。どうぞこちらへ」 「え?あのっ?」 店員に促され訳もわからぬまま奥へと連れていかれる。 そして、そこでまさかの衣装チェンジだ。 着たことのないお洒落な感じのスーツを身につけさせられる。 そしてソファに座り待っていた九条のところへ戻ると「馬子にも衣装だな」と鼻で笑われる。 自分が勝手に着せたのに!! と憤慨するものの声には出せず。 そのまま流れる勢いで店員に見送られてまたまた車に乗って移動となった。 「あのぉ…」 この服はどういう事だろう? そして絶対に高いのが分かるだけに、後で支払えと言われてもびた一文出すお金は無い。 汚す前に返したい。 「これから行く店はドレスコードがある。学ランは無理だ」 「ドレスコード…?」 さっきの店でもクラクラしたのに、また分相応な場所に連れていかれると思うと益々目眩が酷くなる。 とにかく早くご飯食べて1日が終わって欲しいと強く願う祐羽を乗せて、車は目的地へと漸く着いた。

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