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第225話 あたたかい空気

皿の上の料理は、派手にバラけていた。 九条の皿の上とは大違いだ。 ここは仕方なく崩れたオードブルを上手く集めて食べるしかない。 途中、パンも食べたくなり手に持つ。 持つと温かく出来立てだと分かる。 さっそく食べようとしてパンを千切りにかかる。 あれ?思ったよりも外側しっかりしてるな。 自分が普段食べているパンと違い、生地がしっかりしていて意外に千切りにくい。 そこで腕を使って力を入れ引っ張った。 「あ…っ!!」 力加減を間違った為か、千切ったパンは手から勢いよく離れた。 ポンッ、コロコロ…。 そして飛んだパンの一部がグラスに当たり跳ね返りテーブル中央へと躍り出た。 最、悪、だ…。 まさかの事態に、祐羽は硬直した。 「………」 九条は元より無言だったので分からないが、室内の空気が一気に下がった様に感じた。 「……………す、…すみません…」 気落ちして謝ると店員が何事もなかった様に片付け、新しいパンをくれた。 肩を落として溜め息をつくと、向かい側から思わぬ声が掛けられる。 「パンくらいで気にするな」 「く、九条さん…」 優しい…。 「ここの料理はどれも旨い。しっかり味わえ」 そして九条は、祐羽が食事を再開するのを待ってくれている。 「はいっ。ありがとうございます」 ぶっきらぼうで無表情で声のトーンは変わらないが、空気で伝わる。 九条は怖いだけではない。 祐羽はホッとしたのと同時に、少し心がぽかぽかするのを感じ九条へ親しみの籠った笑みを向けた。

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