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第226話 貯金箱の中

仕切り直して、食べるぞ!とは思ったものの…。 後ろから中瀬に視線で(何やってんだよバーカッ!)と詰られている様に感じたし、九条の後ろに立っている眞山が何処か遠い目をしていたのは…気のせいと思いたい。 それからスープや魚料理にシャーベットや肉料理、そしてデザートと豪華で美味しい食事が出てきて、普段なら無理な量でもペロリと完食できた。 お腹いっぱい食べて店を出る頃には、支配人という男が九条を見送りにやって来た。 支配人という肩書きの男がわざわざ出てくるとは、やはり九条の影響力の大きさを感じずにはいられない。 分不相応にも支配人に見送られて車に乗った祐羽は、そこでハッと気がついて青ざめた。 僕…ご飯代、払ってない。 走り出した車の中、先程までのぽかぽか気分は吹き飛んでしまった。 これは帰ってお年玉入れた貯金箱の中を確認して、足りなければ親から借りるしかない。 頭の中で幾らくらい貯金箱に入っているだろうか…とぼんやり記憶を辿った。 そして祐羽は九条の方へと体を向けると、ペコリと頭を下げた。 「九条さん…、あのっ、ごちそうさまでした。もの凄くおいしかったです」 「そうか」 「はいっ。あと、食べたことない料理もあったので…嬉しかったです。連れて行ってくださって本当にありがとうございました」 それは本当の事なので、またいつか食べに行けたらいいなぁと思う。 次は働きだしてお金を貯めてからになるだろう。 一体幾らくらいするものなのか。 「料理に満足したならそれでいい」 「あの、それでですけど…」 「何だ」 九条が祐羽の方へ視線を向ける。 「お食事代…幾らですか?」

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