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第231話 出てこない答え

なんだか大袈裟になってきてしまった…と、祐羽は電車の中で揺られながら頭を抱えていた。 あれから大急ぎで風呂に入り着替えを済ませ、それから朝食を掻き込むと慌てて家を飛び出した。 そして今、悩んでいるのだ。 「…はぁっ」 九条と知り合って、自分は一体何度溜め息をついただろうか…。 こうして新たに浮上した問題は5つ。 ひとつは、昨日聞きそびれた内容だ。 九条が大きな会社の社長なのか、そして父の取り引きとは自分と何か関係があるのか? ふたつめは、ヤクザなのかどうなのか。 みっつめは、昨夜の食事とスーツのお礼。 それから寝てしまった事で抱いて運んで貰ったことのお詫び。 思い出しても恥ずかしい。 気づかない程に熟睡していたとは、大失態だ。 九条さんに抱っこされてって、何度か小脇に抱えられた経験はあるけど…まさかそんな運び方してないよね? ということは…いわゆるお姫様抱っ…。 祐羽は想像すると顔を覆い隠して項垂れた。 恥ずかしすぎてダメだ~っ。 顔を赤くしてひとり電車で悶えてしまう。 高校生男子で男の人にお姫様抱っこして貰う人は、世の中なかなか居ないのではないだろうか? 暫くは赤くなった顔の熱が引くのを待っていたが、次第に冷静さを取り戻す。 「…ふうっ」 いや、もっと大きな問題があった。 九条が自分の事をどう思ってこうして構っているのか…よくしてくれてるのは何故なのか。 一度だけ無理矢理抱かれてしまったが、それのお詫びだろうか…? 記憶は鮮明に蘇り恥ずかしさと居たたまれなさを与えてくるが、触れ合った感触はもう無い。 自分はどういう存在なのか考えたが、それはやはり九条に直接訊かなければやはり答えは出なかった。

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