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第246話 待ち合わせ
「つ、着いた~!同じ建物なのに思ったよりも遠かった…。ここで待ってたら分かるかな?」
なんとか辿り着いた喜びと疲れもよそに、祐羽は水族館の壁に取り付けられている半立体看板の横に立った。
この位置からだとモール内の通路の2方向のどちらから来ても見えるし、入り口ゲートはここの前を通らなければならないので見逃される事はないからだ。
なんだかとてもワクワクする。
胸も高鳴り口元も自分でも分かるほどに、ニヤニヤしてしまう。
そんな祐羽の目の前を家族連れや友達同士、お一人様やカップルが通って行った。
夜に突入する為か、全体的にカップルが多い印象を受ける。
皆、楽しそうに笑いながらゲートを通り抜けていく。
そんな様子を見ていると何だか寂しく感じてしまうのは仕方ないのかもしれない。
いいなぁ…。
ひとりポツンと立っているのは祐羽ひとりだった。
看板の横にひとり立っているのと学生服で目立つのか、近くを通るモールの買い物客らが皆こちらを見ながら通りすぎていく。
そうして暫くモールの様子や水族館へ吸い込まれていく人を見送っていたが、次第に顔を地面に落としてしまった。
九条さん、まだかな…。
時間的にもまだ着かないよね。
どれだけ期待しているんだろうか。
あれだけ会いたくないと思っていた相手に、今は会いたいと思うようになった自分の気持ちの変化に迷う。
九条さんに会いたいって、いつから思うようになったんだろ。
ちょっと優しくされたからかな?って僕、単純すぎるよね…。
そう自嘲した時だった。
人の気配が近づいて来て、祐羽は期待に思わず勢いよく顔を上げた。
※プレゼント企画は明日締め切りです。時間にご注意ください。
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