246 / 1012
第245話 あともう少し
九条さんが来る!!
「わっ、本当に来てくれるんだ!ど、どうしよう!?っていうか待ち合わせ時間より早い?!」
誘ったのは自分で、九条とも水族館へ行くやり取りはしていたもののこうして連絡が入ると、現実なんだと改めて思い知る。
しかも待ち合わせの時間より早く来てくれるということは、仕事を早く切り上げてくれたのだろうか?
嬉しい気持ちと戸惑いと焦りと複雑に絡まった感情に高揚した祐羽は、つい声に出してしまい側に座っていたおばさんから冷ややかな目を向けられた。
我に返った祐羽は、すみませんと頭を軽く下げてからスマホの画面に目を向けた。
それから、ここはひとまず落ち着いて返事をしなければ…と文字を打つ。
【分かりました。水族館の入り口で待っています。気をつけて来てくださいね】
返すと同時に既読がつく。
それが嬉しくて返事を待つが、5分経っても何も返って来なくて心底ガッカリした。
天国から地獄とはいわないが、九条とのメッセージのやり取りがスムーズに行きすぎていて勘違いしていた自分も悪い。
ついついやり取りが楽しくなっていて失念していたが、返ってくるのは当たり前ではない。
相手はヤクザだし、謎も多く色々勘繰ってしまう…そんな相手と会うのだという事を改めて頭に刻む。
「ふうっ…。そうだよね、あんまり気を抜いたらダメだよね」
機嫌も会うまで分からないし…。
それに色んな事を訊いて話をするのが今日の目的なんだ。
しっかり気持ちを引き締めなきゃ!!
祐羽は、まるでデートの様だ何だと浮かれていた先程までの自分を叱咤するとベンチを立った。
それから西側へ位置している水族館を目指して歩いて行った。
そしてかなりの距離を進んでいると、遠くに館内とは一線を画したエリアを発見する。
近づいて行くと、青色の海をイメージした壁が綺麗な水族館が見えてきた。
イルカやペンギン、魚などを模したオブジェが可愛らしい。
あっ、水族館だ!!
祐羽は気を引き締めていたはずの顔を緩めると、先程した決意も忘れて笑みを溢しながら水族館へルンルンで向かうのだった。
ともだちにシェアしよう!