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第248話 人恋しい

何で…? 自分の何処がいけなかったのか…そう自問自答する祐羽の隣から「サトル!」と女の子の声が上がった。 見ては駄目だと分かっていても反射的に顔を向けてしまう。 するとそこにはキャップを被った派手目な服装をした少年が、女の子の肩を抱き寄せている所だった。 やって来たのは女の子の待ち人だった様だ。 「悪ぃ~!遅れた!!」 整えた眉にピアスをしたヤンチャそうな少年だった。 彼氏なのだろう、体と顔をくっつけて女の子は全身で幸せと叫んでいる。 「いいよ、いいよ~!私、全っ然待ってないしぃ~」 さっきまでの殺伐とした空気はそこには既に無く、女の子は可愛らしい声で彼の肩へ頭をコテンと乗せていた。 腕を組んで仲がとても良さそうだ。 「ねぇねぇ、それより早く行こ!!」と言ってこっそりと祐羽をひと睨みすると、ツンッと顔を背けた。 それから彼氏に甘えながらゲートを潜り抜けていった。 その背中を複雑な気持ちで見送る。 何で女子に睨まれるんだろ。 僕、何もしてないのに…。 学校の一部の女子からだけでなく、こうして見ず知らずの女の子からもそういう目で見られていると、流石に悲しくなる。 すると、ひとりで待つ孤独の様な物が余計と心に染みていく。 「…九条さん、まだかな…」 ひとりで居ると改めて人恋しく感じる。 待ち人を探そうと、祐羽はゆっくりと顔を向けた。

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