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第255話 笑顔
表情筋がヒクヒクしてしまうが、このままではまずい。
「えっ、えぇっと~こ、ここの水族館はですね」
話始めたもののあからさまに動揺してしまうが、もう知ったことではない。
「ナイトタイムの時はっ、夜をイメージして、建物や水槽のライトの色も変えてあるみたいなんですよぉ。はい。」
顔は赤いままで視線もなかなか合わせられない上に、スムーズとは言い切れない。
けれど何とか覚えておいた説明を言い終えホッとする。
よしっ、説明できた!
「…そうか」
「あっ、あとイルカショーもあるみたいなんです」
ここのショッピングモールは大きく、丁度水族館側は海に近い。
海水の引き込みなども可能らしく、イルカも飼育している。
そのイルカショーがナイトタイムに最後の1回があるらしい。
「よかったら、その…イルカショーも観ませんか?」
嫌がられるかも…と心配したが、九条は祐羽の顔を見て「あぁ」と頷いてくれたのでホッと胸を撫で下ろした。
九条となんとか会話も出来ているし、イルカショーも一緒に観てくれるという承諾を得て、また1つ楽しみが増えた祐羽は自然と笑みが溢れた。
「へへっ…楽しみです」
そんな自分を九条は目を細めて見つめ返してくれる。
やはり見つめられると照れてしまうが、なにより目が優しい事に嬉しさが沸き上がる。
九条の機嫌も良さそうだと、緊張の糸も少し緩んだ祐羽は、然り気無く先導しながら歩いた。
色々な魚がそれぞれの生息域やテーマ毎に分けられている様で、それに合わせてライトの色も工夫されているみたいだ。
いつも明るい白い光に慣れている身としては、非現実的すぎて感覚が狂いそうになる。
けれど、たまにはこういうのも良いのかもしれない。
特にこんな大切な話しをする日は、気持ちも落ち着いて丁度良い…と思いながら祐羽は泳ぐ魚に目を向けた。
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