見つめあってしまう形に忘れていた羞恥心が一気に込み上げてきた。 カーッと体が熱い。 視線を外してモゴモゴしてしまう。 「…え～っと、この魚も面白い形してますね」 「そうだな」 気を取り直して言ってみたが、視線を向けるとやっぱり九条は魚ではなく自分を見ていた。 「！！…こっちにも隠れてますよ」 「そうだな」 なんでそんなに見てくるの～？！ き、気のせいだよね？ 相槌打つからこっちを見てるだけだよね？！ 考えすぎだろうと祐羽は顔に乾いた笑顔を張りつけて、それから視線を水槽に戻した。 せっかく九条さんも普通に楽しんでるのに、僕が変な勘違いして雰囲気壊したらダメだよね！？ 自分が見られてるとか、勘違いだから！ 自分の自意識過剰を恥ずかしく思い、祐羽は頭から見られてるかも？という考えを追い出した。 今日の大きな目的の為には九条には機嫌よく、そして自分も冷静さを持っていなければならない。 なのに僕は～、普通にしてなきゃ普通に！！ 気にしない気にしない、勘違い勘違い、と念じながらホールの水槽を見つめ続けた。 そうして亜熱帯コーナーを見終わる頃には祐羽の気持ちも随分と落ち着いた。 九条の視線を気にしてしまったが、途中何度か見るが毎回九条と目が合う訳ではなかったからだ。 なので、ずっと自分に向けられているわけではない…と。 そう気がついて、あからさまにホッと胸を撫で下ろし、ついボソッと声に出てしまう。 「ふぅ…、だよね」 そうだよね。 当たり前だよね。 やっぱり僕の勘違いだったんだ～あぁっもうっ、恥ずかしい！ ぐぬぬっ…と歩きながら少し百面相してしまった。 そんな自分の顔を九条に見られているとは気がつかない祐羽だった。