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第266話 興味の向かう先

正確に言うと自分ではなく隣の九条へ視線が向いていた。 九条さんのこと、…見てる? 不思議に思いながら見ると目が合ってしまう。 すると急に嫌悪の目で見られ顔を逸らされる。 視線の鋭さは、正直その可愛い顔には似合わないものだった。 またしても睨まれ祐羽はシュンと項垂れた。 なんで睨まれるの? 何もしてないのに分かんないよ。 怖いながらもう一度コソッと確認するが、既に相手はこちらを見ておらず彼氏と水槽を楽しげに見ていた。 その様子に内心ホッとして、祐羽は安堵ともなんとも言えない溜め息を九条にバレない様に押し出した。 まるで学校で睨んでくる女子だ。 彼女達に似ている。 まさかこんな場所で苦手なタイプに会うとは思いもせず、祐羽は眉を垂らした。 楽しかった気持ちに翳りが出てしまうが、そこに大きな魚がやって来て直ぐ目の前を悠然と泳ぐ。 手を伸ばせば触れそうな錯覚を覚える。 大きな目がキョロッと動くのが愛嬌があって可愛らしいし、何度か往復してくれるその姿にクスッと笑みが溢れた。 まるで自分を慰めてくれてる様に感じる。 助けられた気分だ。 「九条さん。さっきの魚の名前知ってますか?」 祐羽は少し浮上した気持ちを乗せてなるべく明るい声を出した。 落ち込んだ時程に元気な声を出して、気持ちを持ち直すのが良い。 すると九条は魚を目で追いかけながらめんどくさそうに答える。 「知らんな。魚に興味はないからな…が、」 それなら自分が教えてあげようと口を開く前に、九条が続きを発した。 「お前には興味ある」

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