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第267話 許容量オーバー

は? え?っと… 理解出来ない。 祐羽が何とか脳を働かせようとしていると、その間にも九条が顔を寄せてきて耳元で囁いた。 「…お前はどうなんだ?」 「ひゃっ?!」 思わず変な声が出てしまった。 低音で囁かれた耳はくすぐったく首をすくんでしまった。 それと同時に背中にゾクッとしたものが走り、腰に甘い痺れが纏う。 その感覚に戸惑う暇もなく全身が発火したかの様に熱くなり、祐羽はアワアワと唇を震わせた。 「言え。聞いてやる」 「!!」 慌てふためく自分を観察する様にして九条は口元で笑みを刻む。 初めての夜以来の顔の近さに、祐羽の頭は完全に許容量を超えてしまった。 この距離は無理!顔近すぎだよーっ!! 「あぁあのっ、僕っトイレ行ってきます!」 祐羽は恥ずかしさで赤くなった顔を誤魔化す為に咄嗟に嘘を持ち出した。 「すみませんっ!!」 そして九条の返事も待たず下を向いて小走りでトイレへと向かった。 うぅ~無理!恥ずかしすぎる!! 九条さんは自分の事分かってないよ。 あんなカッコいい人にジッと見られたら皆こうなるよね…。 トイレに向かう通路は人が少ない為か、少しヒンヤリとしている。 火照った祐羽にとっては有り難いが、体の熱さは発散されても思考は冴えて却って色々と考えてしまう。 九条に耳元で囁かれ鼻先が触れそうな程に近くで顔を合わせた先程の記憶は一向に消えてくれない。 ダメだ。 こんな事でオタオタしてる場合じゃないんだから。 「今日の目的思い出せ!」 祐羽は自分自身に言い聞かせ拳をギュッと握った。

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