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第279話 攻防戦

ベンチは通路に沿って邪魔にならないようにフードコートコーナーへ向かって並べられていた。 フードコート側は既に埋まっていたが、売店側は誰も座っていない。 「はい。あのっ、僕が買って来ます。九条さんは座っててください!何がいいですか?」 「お前は座ってろ。俺が行って来よう」 「ええっ!!?そ、そんな!僕が行きますから!!って、わあっ…!!」 ま、またーっ?!! 全力拒否を示すが、問答無用で脇を抱えられベンチへと下ろされた。 「俺が行くと言っている。大人しく座っとけ」 有無を言わせない声と上から鋭く見下ろされて、つい息を飲む。 うっかり楽しさから忘れかけていたが、こういう時に九条がヤクザだったと改めて思い出すことになった。 親切心なんだろうけど…やっぱりこういう目つきとか声の時は、怖いんだよね…。 とはいえ、年上のしかもヤクザの親分にそんな事はさせられない。 中瀬にでも見られたら眉を吊り上げて走ってくるに違いない。 スクッと立ち上がると、祐羽は九条の目を真っ直ぐに見つめた。 「いえ、僕が行きます。九条さんが座っててください」 「いいと言っている」 九条は引く気がない様だが、それは祐羽も同じだ。 腕を掴んで行かせまいと粘った。 「僕が行きたいんです!九条さんを今日誘ったのは僕だから、行かせてください…!」 第三者が見れば、飲み物をどちらが買いに行くかで何をやっているんだと呆れるかもしれないが、祐羽には重要案件だ。 誘ったのは自分だし、いつも何かにつけて良くして貰っている立場。 こういう時くらい役に立ちたい。 キュッと眉根を寄せて訴えかけると、遂に九条が溜め息をついた。

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