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第285話 胸を撫で下ろす

祐羽がゴミを捨てお土産コーナーへ足を踏み入れた時には、既にカップルや家族連れで賑わっていた。 クッキーやチョコなどのお菓子コーナーや他にも文房具や壁際には、ぬいぐるみも見える。 なんだか一気にワクワクし始めた祐羽は、さっそく目の前のお菓子の箱が並んだ場所へ向かった。 パッケージにはどれも可愛いイラストが描かれていて、サンプル品を見ると説明書きがあって読むと益々美味しそうに思えてくる。 このお菓子、中にカスタードが入ってるんだ。 お母さん喜びそう。 いや、その前に眞山さん達へのお土産を選ぼう。 時間が無くて買えませんでした、ってわけにいかないもんね。 「ねぇ、梨香達にはこれでいいんじゃない?」 すると少し離れたところから若い女の声が耳に入ってきて、祐羽は瞬間ビクッと肩を揺らした。 恐々チラリとそちらを見ると、案の定あの女子高生が居たのだ。 「そうだな。あいつらコレでもいいかもな」 友達へのお土産物だろうか? 彼氏にお土産を幾つか持たせているのが見えた。 やだな…。逃げちゃお…。 祐羽は笑瑠に顔を見られない様下を向くと、側の客の陰に隠れながら別のコーナーへと退散した。 自分が既に見つかっていたとも知らずに、祐羽は少し先の棚の陰でホッと胸を撫で下ろした。 お土産を探す振りをしながら、笑瑠は唇を持ち上げると機嫌よく微笑んだ。 その視線の先には別のコーナーへと向かう男にしては小さな背中があった。 ※予告忘れてました…Twitterフォロワー様先行九条の番外編アップしました。

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