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第287話 ターゲット
「こうやって見ると背も低くてイケてないのよねぇ…」
振り返って彼氏を見て笑瑠はそんな事を呟く。
それは、あの魅力的な大人な彼とつい比較してしまった結果だった。
「あっ、のんびりしてられなかったんだ」
あのチビも上手く追いやれたし、今のうちに絶対に何とかしてやる!
と、一目見たときからムカつく男子高校生の顔を思い浮かべると、瞬時に記憶から消し去る。
それから心を乙女に入れ替えると、側のショーウィンドウに映る自分の髪の毛と服装のチェック。
どこから見られてもオッケー!!
それから困ってみたり哀しんでみたり、百面相をして最後に笑顔で締め括る。
この角度とかいいかも…私、可愛いよね!
よし!!
気合いを入れてワクワクしつつ顔を巡らせた。
「え~っと、あっ!」
ふふふっ、見つけた~!
そっと離れた場所から見つめる先には、ベンチに腰かける九条が居た。
横から見ても、九条は鼻筋が通っており顎のラインも綺麗で整っている。
こうして見ると、足がとても長いのが改めて分かる。
握られているカップが小さく見えるのは、それだけ手が大きいという事だろう。
あの手で頭を優しくポンポンされてみたい。
前を見据えているその美貌を思わず笑瑠は、うっとりと眺めてしまった。
今の彼氏と比べて断然カッコイイし、九条の様な男が恋人なら誰からも羨ましがられるに違いない。
身につけている物も安物でないのは、ブランド品が好きな笑瑠の目にはしっかりと分かる。
それに加えて、あのいけすかない男子相手に、男は然り気無くエスコートしていたのを見ていた。
お金持ちでイケメンで優しいなんて、最高じゃない!!
「絶、対、に、落とす」
その目的の為に、一歩踏み出した。
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