288 / 1012

第287話 ターゲット

「こうやって見ると背も低くてイケてないのよねぇ…」 振り返って彼氏を見て笑瑠はそんな事を呟く。 それは、あの魅力的な大人な彼とつい比較してしまった結果だった。 「あっ、のんびりしてられなかったんだ」 あのチビも上手く追いやれたし、今のうちに絶対に何とかしてやる! と、一目見たときからムカつく男子高校生の顔を思い浮かべると、瞬時に記憶から消し去る。 それから心を乙女に入れ替えると、側のショーウィンドウに映る自分の髪の毛と服装のチェック。 どこから見られてもオッケー!! それから困ってみたり哀しんでみたり、百面相をして最後に笑顔で締め括る。 この角度とかいいかも…私、可愛いよね! よし!! 気合いを入れてワクワクしつつ顔を巡らせた。 「え~っと、あっ!」 ふふふっ、見つけた~! そっと離れた場所から見つめる先には、ベンチに腰かける九条が居た。 横から見ても、九条は鼻筋が通っており顎のラインも綺麗で整っている。 こうして見ると、足がとても長いのが改めて分かる。 握られているカップが小さく見えるのは、それだけ手が大きいという事だろう。 あの手で頭を優しくポンポンされてみたい。 前を見据えているその美貌を思わず笑瑠は、うっとりと眺めてしまった。 今の彼氏と比べて断然カッコイイし、九条の様な男が恋人なら誰からも羨ましがられるに違いない。 身につけている物も安物でないのは、ブランド品が好きな笑瑠の目にはしっかりと分かる。 それに加えて、あのいけすかない男子相手に、男は然り気無くエスコートしていたのを見ていた。 お金持ちでイケメンで優しいなんて、最高じゃない!! 「絶、対、に、落とす」 その目的の為に、一歩踏み出した。

ともだちにシェアしよう!