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第313話 優しい感触

「?」 不思議に思い肩へ置かれた手を見る。 大きな骨張った男らしくも綺麗な手が自分の肩を掴んでいる。 この手に掴まれた今、抵抗したところで逃げられはしないだろう。 九条さんから逃げるなんて不可能な気がする…。 だけど今日。この後、聞きたい事を…理由を聞いて僕の気持ちを伝えて、それから…。 終わりにするんだ。 九条さんはヤクザだし、これ以上関わるのはよくないから。 だけど…。 「…」 祐羽は肩の上から九条へとゆっくり視線を上げて九条へと向けた。 そこには整った男の顔。 九条さん…優しいんだよね…。 確かに初めの頃は怖かったし痛い嫌な事もされたけど、ずっとずっと優しくしてくれてる。 それにしても何で僕なんだろう? 大人でカッコイイ男の九条さんが、僕にこだわる理由が分からない。 こうして水族館にもつきあってくれて、お土産も買ってくれて…九条さんと一緒に水族館に来れてとっても楽しい。 嬉しいし楽しいとか思っちゃってるなんて、どうしよう…。 「よし、行くか」 「あっ、はい」 そう言うと九条は片手で祐羽の肩を抱いたまま歩き出した。 ハッと我に返り大人しく着いて歩く。 運良く周囲で自分達のおかしなやり取りを目撃していた客はおらずホッとする。 それも束の間。 明るかったフードコート等のコーナーから、水槽が並べられた空間へ入る直前だった。 チュッ 急に影が落ちてきたかと思うと、小さなリップ音と共に頬へと熱い感触が優しく触れた。

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