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第315話 子どもっぽい大人

一体いつまでこのままで居るのか? 肩を抱かれたまま次のコーナーへ移動した祐羽は、キスされた事やこの体勢でいることに恥ずかしさや焦りでモヤモヤしていたのだが、目の前にペンギン達がてちてち歩いているのを見て、それは一気に吹き飛んだ。 「あっ!ペンギンだ!!」 嬉しさに声を上げると、自然と九条の手が肩から降りた。 そんな事を気にもかけず、祐羽はペンギンの元へと小走りに駆け寄った。 「可愛い~!九条さんっ、あそこ雛ですよ!」 祐羽が指差す所へ視線を向けた九条は「デカいな」と眉間に皺を寄せた。 それもその筈で、雛といっても随分成長している。 ほんの少し綿毛を纏っている以外は親とさほど変わらないのだから。 そんな九条の言動に小さく吹き出してしまった。 ププッ。九条さんもそんな顔とかするんだ…。 「巣立ちももう直ぐなんでしょうね」 ペンギンの雛がお母さんかお父さんか、甘えて餌をねだっていた。 その他のペンギン達はというと、ヨチヨチと自由気ままに歩いている。 時折ツルンと滑ったり、急いでいるのか尻をフリフリあっちこっちと、沢山のペンギンが賑やかに動き回っていた。 「フッ、ほら見ろ。お前にソックリだろう」 「えっ?似てません、似てないです!僕あんな歩き方しませんもん!」 否定しても九条は何処吹く風といった様子で、ククッと笑っただけだった。 九条さんって、意外と子どもっぽいところもあるんだなぁ…。 そんな事を思いながら暫く様子を見ていると、そのうち何羽かのペンギンが水槽へとダイブして行った。

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