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第316話 静かな空間

「どうやら、向こうにトンネルがある様だな」 ダイブしたペンギンの姿を追うと、視線の先にはトンネルらしき物が続いているのが見えた。 「そうみたいですね。行ってみますか?」 「その為に来たんだろう?」 フンッと鼻で笑った九条が歩き出したので、祐羽はその背中に着いて行った。 ペンギンコーナーは広々としているにも関わらず他には誰も居ない。 先程のフードコートも少なかったので、他の客は随分と見学ペースが早いらしい。 寂しいどころか、お陰で悠々と見て回れそうだ。 そうしてコーナーを後にすると、そのまま順路案内が設置されており、その頭上をペンギン達が泳いでいるのが見えた。 「わぁ~!」 見上げるとまるで飛んでいるかの様に、羽をパタパタさせつつ泳いでいる。 中にはまるで弾丸の如く横切っていくペンギンもいた。 白い腹がなんとも可愛らしい。 できるものなら1度くらい触ってみたいものだと思いながら感動に見上げていた。 ペンギンを堪能して、それから再び順路を辿る。 そのまま次もトンネルかと思いきや一瞬の暗がりを抜けると、そこにはクラゲ水槽の並ぶ幻想的な空間が現れた。 赤と青と、それの合わさった紫の光の渦の中でクラゲ達がフワフワと泳いでいる。 存在自体が不思議な形状と動きを繰り返すクラゲはこの世のものとは思えない。 「…綺麗」 そう呟いた祐羽は、ぼんやりと水槽を泳ぐクラゲを見つめた。 フワフワフヨフヨと漂う姿を眺める。 他の部屋の様に細長くない直四角に設計されている室内。 祐羽はゆっくりと歩きながら見学して行く。 こうして祐羽が黙っていると、九条は話さないので静かだ。 僅かな海の音を録音したBGMが雰囲気を盛り上げている。 グルリと見て回る祐羽と違い、九条は早々に最短距離で突っ切って、終わりの場所でクラゲ水槽に何気なく視線を向けていた。

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