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第317話 チャンス

うわっ…カッコいい。 祐羽は思わずその場に立ち止まり、内心呟いた。 よくも声に出さなかったと自分を誉めてやりたいものだ。 ゴクリと唾を飲んで、それから遠目から九条の横顔を眺めた。 赤や青、紫の光の渦が溢れる空間。 そこに整った顔立ちの九条が物静かに、まるで作り物を思わせる無表情で一点を見つめている。 その姿は言葉では現せない。 暫くぼんやりとしていたが、祐羽はあることを思いついてスマホを取り出した。 記念にと魚やペンギンをたくさん納めてきたし、自分も一緒に入ったりもした。 九条さんの写真1枚も無いから…記念、記念! そう言い聞かせた祐羽はさっそく九条を撮ろうとするが、こんな時に限ってこっちを見ているのだ。 仕方ないので、まずはクラゲをパシャパシャ納めていく。 そんな祐羽を九条が時折見ているのを感じるが、知らん振りして撮っていく。 九条さん、さっきみたいにクラゲ見ててくれないかなぁ~。 クラゲを撮ったり観察する振りを続けて、タイミングを見計らう。 そうして焦れながら待って、数分した頃だろうか。 チャ、チャンスきたーッ!! 九条が丁度クラゲ水槽へ視線を向けていた。 これを逃したらもう、今この時の九条は永遠に撮る事は出来ないだろう。 九条との関係は絶ち切らなくてはならないのだ。 それも今日この場所で疑問をぶつけ、その答えを聞き、それから関係の終わりを伝えると決めて来たのだから。 祐羽は複雑な思いを胸にしたままクラゲ水槽越しに、九条を写真に納めた。

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