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第319話 解放へ向けて
祐羽の中での九条は、一般常識としても実際出会った時は怖かった…ヤクザだ。
反社会的勢力として子どもから大人までその存在を知っており、なるべく避けては暮らしている。
そんなヤクザである九条と、ひょんなことから縁が出来てしまったのは運の尽きというものだ。
しかし、いつまでもこの非現実的な生活を送る訳にいかない。
まず九条がヤクザかどうかを改めて確認すると同時に、会社の社長かどうかも聞く。
そして、父親の会社に関係しているのか?それが本当なら何故なのかを聞くことにする。
九条さんと別れる為に最善の答えを見つけなきゃ。
もし九条さんが本当にヤクザだったら…僕に連絡をしたら必ず家に来る様に言った九条さんが、ダメ押しとしてお父さんの会社の事を人質の様な条件にしていたとしたら…。
祐羽は眉をしんなりとさせた。
九条との縁を切りたい祐羽は、九条とのこれまでの事を両親に話して警察へ相談に行くという考えを持っていた。
本当にそうだとして父・亮介の仕事がダメになったらと思うと、それも悩んでしまう。
けれど、それを許してしまっては自分も解放されないし、いずれは亮介にも仕事以外の害が及ぶかもしれない。
最近は優しいけど…ヤクザはヤクザだし。
でも、あの日からずっと優しいんだよね…でもやっぱり駄目。
ヤクザだから、もしかしたら直接何かしてくる可能性も…いや、それはないよね。
九条さんエッチな事して来た時以外はずっと優しいんだもんね。
僕の話を聞いてくれるし、少し笑ってくれるようになったし、今日だって本当に楽しいし…。
抱えているお土産のシャチを無意識に撫でてしまう。
ソワソワして落ち着かない。
僕が疑問に思ってる事を聞いて、もしもその通りだとして、それしたら九条さんと別れる。
別れなきゃ駄目なんだって分かってるけど、でも…。
頭がモヤモヤして胸が変に苦しくなるのは何故だろうか。
自分で決めたことなのに、ここへきて遂行出来ないでいる。
自然と表情は曇っていき、溜め息が溢れた。
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