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第323話 受け継ぐ思いは

「す、すみません…!気になって調べてしまって…すみません…」 気持ち的にヨロヨロしつつ素直に祐羽が頭を下げると、九条が頭に手を乗せてきた。 「何を謝る必要がある…?顔を上げろ」 「…っ」 怒られなかった!よ、良かった~。 逆に不思議そうに訊かれてしまった。 祐羽はホッと胸を撫で下ろすと、おずおず顔を上げた。 「俺は主に会社の経営をしている。裏家業だが、うちは世襲制でな…自動的に継ぐ事になった」 世襲制って事は代々子どもが受け継いでいくって事だよね。 九条さんは長男なのかな? だから自動的に受け継いだって事か。 九条は水槽に背中を預けると腕を組んだ。 「あの…九条さんは、ヤクザのお仕事やりたくないんです、か…?」 こんな質問は失礼極まりない事は分かる。 ヤクザだなんて神経過敏にならなくてはならない話題であるし、それが九条の家に直接関係している事だけに訊くのは憚られる。 けれど、思わず聞かずにはいられなかった。 九条さんが仕方なくヤクザしているって聞きたいのかもしれない。 そしたら、いつか辞めてくれるかも…辞めてくれたら…辞めてくれたらって、どうだっていうの? そんな思いを抱きながら九条が話の続きをするのに耳を傾けた。 「曾祖父から続いていてるからな…俺の代で終わらせる気はさらさら無い」 それを聞いて、祐羽はガッカリした。 九条はヤクザを辞める気持ちはないのだと。 代々続いているヤクザをしっかり受け継いでいくと言われたも同然だ。 しんみりと祐羽は九条の続く言葉を耳に入れた。 「ヤクザは嫌か?」 九条はそう言うと組んでいた腕を解いてソッと祐羽の顎に手を添えた。

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