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第330話 その表情は

駐車場では目立たない様に…といっても十分怪しい雰囲気ではあるが…。 駐車場では黒光りする異質な空気を放った車が待機しており、モール内から出てきた九条の姿を確認すると直ぐ様目の前に移動して停まった。 今回は中瀬がドアに手を添える。 九条が乗り隣に祐羽が乗り込むと、静かにドアが閉められた。 車は助手席に座る眞山の指示で走り出す。 自宅とは違う方向へと向かう車に、一体何処へ行くのかと祐羽はキョロキョロと外の様子を眺める。 「これから飯だ」 そんな祐羽の様子に気づいたのか、九条がそう教えてくれる。 「えっ?!ご飯ですか?」 まさか晩御飯を食べると思っていなかった祐羽は九条の言葉に驚いたが、よく考えると週末だ。 九条との約束を守るならば、お泊まり確定だ。 となると、自動的に晩御飯を食べるのは当然だった。 そうだった。 それなら、お父さんの仕事についての話は御飯の時にしよう…いや、せっかくのご飯の時に話すのも悪いかな?食べ終わってからでも…いや。食べながらの方が却って話やすいんじゃ、 「腹空いてないのか?」 「えっ?!あ…い、いえっ。お、お腹空いてます。もの凄く!」 黙ってしまった祐羽に九条が怪訝な視線を向けてきた。 それに対して祐羽は慌てて首を振り否定すると、その必死な様子がおかしかったのか九条がフッと楽しそうに小さく笑った。 その表情に祐羽は思いもよらず、ドキッとした。 普段表情の少ない人間のちょっとした変化は計り知れない魅力を持っている。 九条さん、益々表情が分かりやすくなってきたかも? どんな表情してても、やっぱりカッコイイなぁ…。 祐羽はどこか楽しそうな雰囲気を醸し出している九条の横顔をドキドキしながら盗み見た。 そんな祐羽を乗せた車は、大通りを越えてとある場所へと着いた。 後部座席のドアが開けられた場所に何気に降りた祐羽は、その場所にピシッと硬直してしまったのだった。 ※新しい番外編を固定ツイートに置きました。また次回何するかの企画アンケート実施中です。TLの何処かに流れてます。

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