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第334話 実は顔に出てる

「毎週末は泊まりだと言っただろう」 そんな祐羽に九条がサラッと悩みの種であるキーワードを投げてきて、思わずギクッとしかけ根性で踏み留まった。 ここで親には前以て言ってないとなれば、話がややこしい事になりそうだ。 「あ~はいぃ…。でも、親にその日どうなるか一応連絡する様に言われているので~なのでその…連絡、させてください…」 心の内であたふたするせいで、しどろもどろになりつつも九条へ何とかお願いすることが出来た。 「フンッ。なるほどな」 九条が可笑しそうにそう呟き(何がなるほどなんだろう?)と疑問に思った祐羽だったが、取り敢えず許可を貰えたのでそれ以上気にすることなく母・香織にメッセージを入れた。 『九条さんに食事に連れて来て貰ったよ。もの凄く高級な料亭でビックリした』 すると直ぐに既読が付いて『凄いじゃない!良かったわね。食事楽しんでね♪』と母親から返ってきた。 『うん!また話するね』 その時は別の重要な相談も込みだけど。 九条さんの正体を話すのか…そうしたら僕と九条さんはもう…。 そこまで思考が巡った時だった。 入り口に控えていた眞山が襖を開けたのに気がついて、祐羽の物思いは途切れた。 そちらを見ると、眞山に礼を述べた従業員が廊下から室内へと食事を運び入れて来るところだった。 「失礼致します」 そうひと言断ると、目の前に豪華な料理が現れた。 「わぁっ…!」 次々と並べられる色とりどりの料理を前に、祐羽は思わず身を乗り出した。 す、凄い!凄く豪華だ~!! 目を丸くさせ頬を緩ませながら声にならない感激の声を上げている祐羽に、部屋の隅で控えていた中瀬は(こいつ、ホント顔に出すぎ)と内心で呆れてしまう。 自分が思っているよりも兎に角、喜怒哀楽と心の内が表情に出ている事に祐羽だけが気づいていないのであった。

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