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第347話 知りたい答え

祐羽は一瞬だけ戸惑って、それから口を開いた。 「…っ?」 開いたけれど、声が出ない。 何で? 何でだろうかと不思議に思いつつも、思い当たる事もあった。 自分が自分で脳裏へと隠してしまったとある気持ちが邪魔をしているのに気づく。 この話をしたら、聞きたくない事を九条さんから聞かされるかもしれない。 そしたら僕は、その時どう思うんだろうか…。 思ったところで、九条さんが今のこの訳の分からない関係を続けるとしたら…。 僕は九条さんと縁を切りたいと思ってた。 それは間違いない。 だけど、ここにきて言い出すのを迷ってる。 「どうした」 いつまでも口に出さない祐羽に声を掛けるが、それからは口を開かず静かに九条が自分を見つめてくる。 その魅惑的な瞳を見つめ返し、それから視線を迷わせた。 あの時だって、僕、九条さんと離れたくないとか思ってしまった…。 怖くないけど、嫌じゃないけど、やっぱり駄目なんだ。 お父さんの会社は九条さんの会社と規模は全然違うけど、今これからの時代で注目されている分野の会社だ。 僕を人質にして九条さんがお父さんの会社に何か悪巧みを考えていたら…。 それしか僕を手元に置いている意味は無いと思う。 だって僕…九条さんが一緒に居る価値のある人間じゃない! 自分で言うのも何だが、祐羽は普通だ。 一般家庭で生まれ育ち、学校は公立の普通高校で、特別秀才でもなければ将来スポーツでスポンサーがつく様なエリートでもない。 見た目も両親や部活の先輩等は可愛いと言ってはくれるが、あくまでも身内贔屓だ。 そんな自分に九条が固執する理由は無い…。 そうだよ。 九条さんは仕事で必要だから僕に良くしてくれてるんだ。 もしかしたら、会社に有利にして貰おうと僕からお父さんに頼みたいのかもしれない。 それか、やっぱり人質か…。 今これから疑問をぶつけたら答えが出る。 そうしたら自動的に最後の1番訊きたいと思っていた事の答えが分かる事になる。 訊きたいけど聞きたくない。 どうして僕を家に呼ぶんですか? そして、何であんな事をしたんですか? 九条の答えが知りたいけれど、知るのが怖くなってきた。

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