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第415話 4

時計の針が11時半を示す頃、いよいよ祐羽のクラスもお昼ご飯だ。 ここは給食室が完備されているので、遠足の時以外はお弁当は不要だ。 隣の3歳のクラスからは既に給食のいい匂いがしていて、廊下の窓から中を見るとモグモグと食べている姿がよく見えた。 祐羽の幼稚園ではお当番が割烹着を着て、給食室から自分達で運べる物は運ぶという習慣になっていた。 「祐羽くん、まだ?」 「えっ、あっ、待って、」 頭からスポンとかぶった祐羽は、割烹着が逆さまな事に気づいて慌てて脱ごうとする。 けれど、どっちが前か分からなくなって確認の為に頭を出すと、やっぱり前後反対だった。 「~っ、もう先行くね!」 祐羽が割烹着にモタモタしている間に春は待ちくたびれて、祐羽を置いてさっさと行ってしまった。 「あっ、…っ」 祐羽はベソをかきそうになりながら我慢して1度脱いで着ようとすると「手伝ってあげる」と直人が前と後ろが間違わない様に服を軽く持ってくれる。 するとそこへ「ほら」と慶太郎が頭に帽子を被せてくれた。 「直人くん、慶くん、ありがと!」 祐羽は割烹着姿に無事変身すると、満面の笑みでお礼を言う。 かわいい…!!! 直人と慶太郎は同時に思った。 可愛い女の子はクラスにもいる。 けれど、祐羽への可愛いは…何だろうか? 「じゃぁ、給食取りに行ってくるね~」 マスクをして、のほほんとした声で告げた祐羽はテクテクと歩いて行った。

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