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第414話 3

「お当番さん、これ運ぶの手伝ってくれる?」 今日は秋の運動会に向けて、リレーの練習だ。 倉庫からカラーコーンを出した先生に頼まれて、当番の祐羽と春が走り寄る。 それから運んで行く。 春はしっかりした体つきでコツも掴んでいるので余裕で運んで行くのだが、祐羽はというと身長も低い上に力も弱い。 おまけにコーンの持つ位置が悪く、滑り落ちそうだ。 予想通りに祐羽は何度も地面に落として殆ど進んでない。 それを待機場所で見ていた慶太郎は我慢できなくて祐羽に駆け寄った。 「おいっ、手伝ってやる!」 「えっ?あ、ありがとう…!」 満面の笑みを向けられて一瞬時間が止まった慶太郎だったが、我に返ってコーンを持ち上げた。 顔が熱くなるのを誤魔化す様に「しっかり下から持てよ」と素っ気なく言ってしまった。 ふたりで端を持って一緒に運ぶ。 いつもリレーの時には置いてあるので、場所は把握していた慶太郎は祐羽を引っ張る形でコーンを運ぶ。 「よし、オッケー」 コーンを置いた慶太郎がそう言うと、祐羽が「オッケー」と真似をした。 真似した。 祐羽、俺の真似したな~。 ただそれだけのことなのに、胸がポカポカ温かい気持ちになる。 「ありがとう」 祐羽がお礼を言うと、慶太郎は我慢できなくて「できなかったら、また言えよ!」と言いながら手を繋いだ。 それからふたりでニコニコ皆の待つ場所へと向かった。 それを直人が面白くない気持ちで見ていた。

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