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第413話 2
「それは、『ら』」
「『ら』か~。直人くん、ありがとう!そ、れ、か、ら」
祐羽が絵本を読む隣で直人はただ座って一緒に本を見るだけ。
ただそれだけなのに、なんだか楽しくて仕方ない。
なんでかな?
でも祐羽と一緒に居ると楽しい気持ちになる。
俺が祐羽に色々教えてあげよう。
一生懸命に読んでいる祐羽の横顔、そして声もとても可愛い。
そう思うと、直人は急な衝動に駆られて祐羽の頭を撫でた。
サラサラの髪の毛が気持ちいい。
「わぁっ?!え、なに?」
「あっ、ゴメン。何でもないけど、祐羽の髪の毛気持ちいいんだもん。触らせて?」
「いいよ。その代わり僕にも直人くんの髪の毛も触らせて」
そうして二人で髪の毛の撫で合いが始まった。
顔を見合せてクスクスと笑みが溢れる。
そんな二人を朝の鞄の片付けをしながら、慶太郎が面白くなさそうに見ていた。
朝の会が始まった。
祐羽の隣は直人と慶太郎が陣取っていて、そのふたりの横に他のクラスメイトが場所取りをしているので、いつも列がおかしなことになる。
「ちょっと、みんな。気持ちは分かるけどバランスよく3列に座って~」
先生のお決まりの言葉だ。
「さぁ、今日のお当番は~?」
4月に作ったお当番表。
みんながそれぞれ自分の顔を描いていて、名前が無くても絵だけで既に誰の顔か覚えている。
「「「祐羽くんと春ちゃーん!!」」」
呼ばれたおませな春ちゃんは大喜びで前に出る。
それから恥ずかしそうに、のろのろと祐羽が出た。
祐羽が当番か…俺が手伝ってやろ!
前に出て発表している祐羽を見て、慶太郎は強くそう思ったのだった。
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