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「とりあえず、このぬいぐるみ達は別の部屋に…」 「ボク達、祐羽くんと一緒がいいな。ずっと一緒に居たのに悲しいよ~祐羽くぅ~ん」 またしても声がして振り向くと、やっぱり亮介だ。 「邪魔しないでって言ったのに!」 亮介は今のままの優しい子どもらしい息子でいて欲しかった。 これは親の勝手だ自己満足で子どもを無視していると言われるだろう。 けれど、いずれ男として自立していくのだ。 もう少しだけでも…という思いからだった。 今度こそ階段を下りていった父親に、呆れた様子を見せた祐羽は、手にしているクマのぬいぐるみを見下ろした。 子どもの頃から一緒にいる。 この犬のぬいぐるみは誕生日プレゼントで貰ったし、こっちのウサギは祐羽が一目惚れしたからとゲームセンターで取って貰った物だ。 他にもぬいぐるみが幾つかある。 「はぁっ…。模様替えは諦めるか~」 祐羽はクマのぬいぐるみに笑いかけた。 「部屋じゃなくて僕自身が男っぽくなればいいんだしね」 祐羽は密かにイケメン目指して決意をするもののこの先、男らしく成長する夢は儚くも消え去る事を知らないのであった。

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