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金尾は一臣の顔を見て、ひきつった笑みを浮かべる。
愛想笑いのつもりだろうか、見苦しいこと極まりない。
テーブルに近づくと増渕が椅子を引き、ドカッと一臣が腰を降ろすとパイプ椅子が悲鳴をあげた。
長い足を組んで二人を睥睨する。
一体誰だ?と分かっていない佐々木は金尾の様子を見てただ事ではないと悟り、取り敢えず黙って様子を見ている。
顔は緊張感に包まれており、借りてきた猫の様だ。
そんな佐々木と秘書の男が見つめる中、一臣は手を懐に入れると数枚の写真をテーブルに投げた。
それを見た金尾は目を見開き写真を確認すると、慌てて掴み取った。
そこには先月、都内の料亭で密かに支倉組幹部と会っていた証拠ともいえる写真があったのだ。
あそこは奥の部屋を貸しきりにしており、店員も入れないようにしていた。
おまけに、相手側も素性を隠して一般客として店に入っていた筈がどうして…。
金尾の視線を受けて一臣は目を細めた。
「今日は取り引きに来た」
「と、取り引きだと?!」
一臣は腕を組んで横柄な態度で口を開いた。
「この写真。ネットにバラ蒔かれたくないだろう?」
これがバラ蒔かれれば一瞬で拡散され、政治家生命は確実に終わる。
きっとここで写真を破り捨ててもデータは残っているだろう。
便利になった反面、こういう時に時代を呪いたくなってしまう。
ここは大人しく取り引き内容を確認するしかない。
そこで判断して、無理なら支倉組に助けを求めればいいのだ。
そう金尾は思ったが、そんな分かりやすい思考など一臣の手のひらの上だった。
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