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「こんな形で、」 滝本が教えると、祐羽が手の形を真似してみる。 そこにボールを置いてやると、祐羽がトスを再現する。 「いいんじゃね?そんな感じ」 よし、やってみようと二人でもう1度やってみるがやっぱり上手くいかない。 よく見ると、打つ瞬間腕の持って行き方がおかしい。 「ボールを意識しすぎじゃねぇの?ほら、こうして…」 祐羽の前に立つと滝本は腕を持って正しい形へと導いてやろうとして止まった。 え?めっちゃ近くね? この体勢って壁に押さえつけたら、そのままキス出来るんじゃぁ…。 とはいえ壁までは遠い。 「滝本くん?」 「!!」 固まって動かなくなった滝本を不審に思い、祐羽が声を掛けると、我に返った。 あ、あっぶね~変な事考えてた! 滝本は冷や汗が出る思いに、慌てて手を放した。 キョトンとして祐羽が見上げている。 「…グッ」 こいつも悪い。 そんな顔で見てくんな~~~! 祐羽は特に普通だが、滝本の脳は今おかしい。 「よぉーし集合!!これから紅白戦するぞ~」 その時、教師の声がして滝本の思考は中断された。 「こ、紅白戦…」 祐羽が悲愴な声を漏らすと、集まりにやって来た原が肩を抱いてきた。 「月ヶ瀬!行こうぜ~」 「あ、うん」 その姿を見て滝本が原を見た。 すると原が(お前は一緒に練習したから今度は俺の番!)というようなアイコンタクトを送ってきた。 まぁ…ちょっと間を開けるの必要かもな…。 滝本は篠崎ふたりは同じ様な事を思いながら、歩いて後を追った。

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