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そこには『乙女小説・ラブハニー』の文字があるポップな画面。 乙女の恋がたくさん詰まったNL小説サイトだ。 華林は画像をスクロールさせた。 「あっ、更新されてる!」 大好きな小説が更新されていて、ウキウキと画面を開く。 その小説の内容は、会社の社長と受け付けをしている主人公が、お互い気になっていて、とある事をきっかけに社内で内緒のオフィスラブを繰り広げるというもの。 乙女の夢をこれでもかと沢山詰め込んだ内容なのだが、設定からして(これはもしかして自分の事では?)と、同調してしまったのだ。 こう思ってからは、小説が現実に起こるのではないかと毎日ドキドキワクワクして過ごすようになった。 けれど、勤めはじめて1ヶ月ほど経つが一向にドキドキ秘密のオフィスラブな展開は訪れそうになかった。 華林はいつも受け付けと社員食堂とロッカールームの往復のみ。 一方の九条は、部下を従えてフロアを颯爽と横切っては最上階の社長室へと直行してしまう。 帰りに顔を見かける事もあるが、いつの間にか裏口から帰宅しているという日もある。 そんなワケで、新入社員以外の結婚希望の女性陣は一年もすると諦めて、新たな恋を求めるのだった。 まぁ…美しい物は愛でたい心はあるので、九条が現れるとドキドキソワソワして、うっとりしていた。 その時ばかりは、有り得ない夢を一時的に見ていたりした。 そう。 あくまでも夢なのだ。 ・・・・・ 「もう諦めちゃいなよ。九条社長は無理よ~」 「野沢センパ…」 仕事終わりに受け付け嬢仲間四人と居酒屋へ。 そこで飲みながら愚痴を溢した華林に、先輩達が慰めの言葉をかける。 「あれだけイイ男だもん。きーっと、すんごい美人の彼女が既に居るのよ~きっと」 「そうそう。夢見てもムダムダ~。社長の顔を拝めるだけ幸せと思わなきゃねぇ」 グダグダとビールや日本酒を飲みながらの慰めに、華林は夢見ていた自分がちょっと可哀想に思えてきて、グスッと泣いた。

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