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まさかの女装用。 「いや、意外と需要あるんですよ。といってもネット販売で、さすがに店頭だとあんまり売れないですけど」 それはそうだろう。 普通の客しか集まらない店で女装用のパンツなど、誰が買うものか。 「なんで店頭には在庫少ないんス」 フリル、リボンと付いていて、どうみても女物にしか見えない。 「あとは、これ。可愛い感じだと思うんですけど…」 そして出されたのは、前も可愛いが後ろが気持ち程度フリル になっている。 先に出されたエロいのよりは布面積も多いし、まだセーフだろう。 セーフ、か? 俺、会長に殴られたりしないよな。 喜んで貰えると信じて…。 「…じゃぁ…これ、買うわ」 女装用を買うとか、自分の感覚が麻痺してきているのを脳の奥底で感じ取っていた。 「あとは…」 それから中瀬は気分を変えて、デザインは普通の男物ではあるが色合いや柄が少し可愛い感じの物も幾つか選ぶと会計をした。 「ありがとうございッした~!」 「ありがとな」 元気な店員に挨拶を返すと、今度は自分の下着を買うのにここへ来てもいいかもな…と思いながら中瀬は荷物を提げて車へ向かうのだった。 ・・・・・ そうして買って帰った事を眞山に電話で伝えると、明日の朝に九条の家へ服を持って一緒に行く様に言われた。 「えっ?一緒に、会長の家にですか?!」 今まで九条と対面することすら稀であったのに、まさかの自宅訪問に驚きについ声を上げてしまった。 自宅訪問など、眞山くらいしか経験した組員は居ないだろう。 「お前の事は信用してるからな。それに買ってくれたのはお前だろ?それとも行くのは嫌か?」 「いえ!行きたいです!お供させてください!!」 まず経験出来ないであろうトップ自宅への訪問と、眞山から自分の事を信用してくれているという言葉の嬉しさに、中瀬は勢い込んで返事をした。

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