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番外編『寝相ころりん』
九条のベッドは大きい。
横幅もあって、ふたり並んで寝ても余裕なのだ。
余裕なのだが…。
「…」
九条は静かに目を開けた。
正直眠い、時間は夜中。
胸元にあった熱が無くなりふと見ると、仔犬の姿がない。
確かに寝顔を確認したはずなのに。
九条が少し目を向けると空白地帯の向こうに小さな背中が見えた。
あんなところに…。
寝返りを打ったのだろう。
広いベッド。
祐羽は思ったよりも自分より離れていた。
ベッドから落ちはしないだろうが…。
「…」
九条はひとつ溜め息をつくと、身を乗りだし手を伸ばす。
引き寄せようとすると、祐羽がムニムニ言って寝返りを打った。
1度上を向いた次にこっちを向いた祐羽はクルリと丸くなる。
エアコンが効きすぎて寒いのだろうか?
布団をかけてやろうとした次の瞬間、九条は驚いた。
丸くなっていた祐羽がムクッと四つん這いになったかと思うと、半分寝こけたまま九条の元へと戻ってきたのだ。
ゴソゴソゴソ。
九条の胸元、布団の中へと潜り込んでいった祐羽。
「フッ」
思わず笑ってしまった。
今夜、祐羽の寝相の真相が明らかになった九条。
これなら落ちる心配はなさそうだ。
安心して目を閉じた九条の口元は、らしくなく笑みを刻んでいた。
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