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「もう絶対に雷の時は離れませんから…っ!」 裏切られたと言わんばかりに涙目で睨まれてしまったが、側から離れないのは別に構わないのでOKの意味も込めてよしよしと頭を撫でておいた。 単純で優しくされるのに弱い恋人は、それだけで溜飲が下がったらしい。 ちょいんとソファから降りると、今度こそ団子を食べに戻って行った。 そして、ダイニングテーブルでモグモグとおやつの時間の続きだ。 「…」 俺のところへは戻って来ないのか…。 さっきの話の後だけに、何だか理不尽さを感じる。 自分はそんな時だけ重宝される存在か、と。 すると九条の思いが届いたのか、祐羽と視線が合った。 それから祐羽が団子と九条を交互に見てからこう言った。 「九条さんも欲しいんですか?」 「…」 いや、要らないが。 祐羽は眉をしんなりさせた。 「もう無いです。これ…」 そう差し出したのは食べかけの最後の1本ではなく、1個。 「……お前が食え。俺は要らん」 例え欲しくてもそんな顔でラストの1個を差し出されて欲しいなんて言わない。 「そうですか…?じゃぁ…。あっ!今度、九条さんのも買って来ますね」 そう言って最後の1個を口にした祐羽は、明らかに(良かった~九条さんも欲しかったら申し訳なさすぎるよ…。それにやっぱり最後の1個は食べたいもん♪)という心の声が駄々漏れであったし、雷の事などもう忘れた元の呑気な顔だった。 そんな祐羽を内心呆れながら暫し無表情で見つめる九条。 そんな事に全く気がつかない祐羽は、唇についたタレをペロリ最後に舐め取って満足そうに「ごちそうさまでした」と挨拶をするのであった。

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