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番外編『カエルと祐羽と』
※本編その後のイメージで書きました。
※ふたりも少ししっくりきてる感じ。
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6月の梅雨ともなれば雨の日も多い。
今日も朝から雨が降り、見渡す景色はどんよりとしている。
それは祐羽の心模様を表しているのかもしれない。
「はぁ…」
自分の部屋の窓から見上げる空は遠くまで雲で覆われて、どう考えても止みそうも無かった。
日曜日。
学校もなければ部活もなくて、本当なら今頃は九条の家に居る筈だった。
そしてソファに並んで座り一緒にテレビを観たり、他愛ない会話を楽しんでいたかもしれない。
それなのに…。
「九条さん、今どうしてるのかなぁ~?」
土日の週末を一緒に過ごす予定が、裏の関係で呼び出され渋々だが行くことになってしまったらしい。
どう考えても帰れないのに、祐羽が九条の居ない部屋に泊まる意味は無い。
スマホを見ても着信もなく、かといって自分から掛けるのも迷惑だろうと静かな午後を過ごしていた。
あまりに寂しく退屈になった祐羽は、シャチのぬいぐるみを腕にベッドへゴロンと転がった。
「は~。…夜になったら仕事終わってるかな?」
夜ならメッセージを送っても邪魔にならないだろう。
もし可能ならば、そのタイミングで連絡をくれるかもしれないという淡い期待を抱く。
しかし時計を確かめると、まだ夜迄は時間がある。
「3時かぁ…ふぅっ…。おやつでも食べようかなぁ…」
ベッドにぬいぐるみを置いてポンポンと頭をすると、階下へ降りていく。
リビングには父・亮介と母の香織が居り、テレビで日曜の特番を観ているようだった。
ふたりで芸能人のやり取りを見て笑いあっている。
いいなぁ~お父さんとお母さん、楽しそうで。
ちょっと寂しさを感じつつ、その様子を横目に祐羽はキッチンへ入ると、いつもお菓子をストックしている場所の扉を開いた。
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