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「おはようございます」 「ぐっすり眠れたか」 「うっ…、はい。よく眠れました…」 昨夜の失態を思い出し恥ずかしさに頬を染め項垂れた。 絶頂に導かれ気持ちよく眠れたのは事実だが、恋人としては失格だろう。 これで何回目だろうか。 そろそろ九条の優しさの限界も近いかもしれない。 前日早目に寝て体力を確保するか、エッチの時間を遅くない時間にして貰うとか?と考えたが、そもそも九条の帰宅が遅いのが問題の根本にある。 プラス、自分が快楽を享受した後に目を閉じて寝る方向に意識が持っていかれる癖が出来ているのを改善せねばならない。 そんな風に祐羽は頭を悩ませたが、九条は優しく頭をポンポンしてくれる。 「眠れたなら、それでいい」 九条さん、本当に優しくなった…。 「ただし、次こそはつきあって貰うがな」 九条に笑われて思わず「がんばります!」とトンチンカンな返答をする祐羽であった。 それからふたりで九条の用意した軽めの朝食をとった。 トーストにスクランブルエッグ、サラダにスープ。 なんら変哲もない朝食でも九条と一緒に食べるだけで美味しさが違う。 そもそも卵ひとつとっても、祐羽が普段食べている物とは値段が違うらしいが…。 眞山が手配する食材はいちいち高級品だったので、それも美味しさの違いなのかもしれない。 そんな美味しい食事を有り難く思いながら、心地よい沈黙と時々祐羽から掛ける声に九条がひとこと返す会話。 つきあい始めて回数を重ねていくうちに、随分と九条に緊張することなく食事を楽しめていた。 すると、九条が珍しく自分から話題を切り出してきた。 「おい。ところでお前は夏休みがあるのか?」 夏休み? 「えっと…あります」 突然の質問に疑問符が浮かぶ。 祐羽は意図が分からずキョトンと九条を見返した。

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