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心地よい眠りを貪っていた祐羽は、ゆっくりと瞬きを繰り返すと、目を開けた。
「ん…、んん……あれ?」
隣に九条の姿は無く、何気に室内の時計を見ると9時前だった。
「あ…」
まずい…。寝落ちしてた。
祐羽はムクリと起きると慌てて寝室を出る。
九条によって綺麗にされた体には昨夜の名残は無いが、風呂場に直行。
既に慣れた物でシャワーを借りてサッパリして、上がる。
髪を乾かし、それから自室で服を着て身仕度を整えると祐羽はリビングへと向かった。
九条の家のスリッパは少しサイズが大きいので今まではパタパタと音がしていた。
けれど、今はゆるっとした柴犬の顔が可愛いスリッパに代わり、音も静かだし足に馴染んで歩きやすい。
九条の会社でゆるキャラマスコットが開発されて、そのグッズのうちのひとつだ。
九条の家には正直似合わないが、九条と自分以外では眞山か中瀬しか訪れないので、可愛いスリッパが置かれていても問題はない。
試供品として九条が持ち帰った柴犬グッズを祐羽が使用している。
「は?確かにそのうちとは言ったが、急がすぎる」
リビングのドアは開いており、その向こうから九条の声が廊下へも聞こえてきた。
その声は怒っている様な…でも語尾は笑いが含まれているのが聞き取れる。
誰と話してるんだろう?
仕事の話だと、聞かない方がいいかな…?
ピョコッと顔だけ覗かせると、鋭い九条は直ぐに気づき視線で入室を許可する。
その間にもスマホで通話は続く。
「誰も行かないとは言っていない。…ああ、分かった」
何処かに行くのかな九条さん。
もしかして出張かな?
ただでさえ忙しいのに、出張だとしたらまた会えない時間が増えてしまう。
さすがにそれは少し寂しい。
しんみり九条を見つめているうちに通話は終わり、来い来いとジェスチャーで呼ばれる。
近づくと九条は祐羽の細い腰を掴んで自分の膝の上へと座らせた。
それから朝の挨拶とばかりにチュッとキスをした。
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