591 / 1012

15

「広島で系列組織の襲名式がある」 襲名式? また分からない単語が出てきた。 これは調べておこう。と、祐羽は黙って聞く。 「そっちに親戚が居るんだが、ついでにソイツの所へも行くことになった」 「親戚の人…ですか?」 「母親の妹の息子だ。そこも同業者だ」 九条さんのお母さんの妹さんもヤクザにお嫁に行ったんだ。 もしかして、九条さんのお母さんの実家もヤクザに関係あるのかも? だから、ふたりともヤクザに嫁いだのかな…? さっきの電話はもしかして、その従兄弟の人だった? 親戚の人かぁ…。 わざわざ会いに行くなんて、仲がいいのかもしれない。 仲の良い人と会ったら、九条さんもいつもと違う顔をするのかなぁ? そんな九条も見てみたい。 けれど、本当に一緒に行っても迷惑にならないだろうかと一抹の不安もある。 「そうなんですね。…でも、僕が行ったら迷惑になるんじゃ?」 親戚でもヤクザでもない僕が行っても迷惑だろうし、場違いすぎると思う。 すると九条がクッと小さく笑った。 「安心しろ。別に親分だらけの襲名会場にお前を連れて行ったりはしない」 「それなら、良いんですけど…」 安堵の息を吐いてあからさまに顔色を変化させてしまった。 ヤクザだらけの場所に行くなんてとんでもない。 「普段お前と会えないからな。…ちょっとした旅行だ」 「!!!」 九条さんと旅行…!! 「行くだろう?」 九条が眉をしなっとさせて聞いてきた。

ともだちにシェアしよう!