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それから中瀬の用意した除菌シートで手を拭き(絶対にコイツは溢して服を汚しそうという理由で)膝にナプキンを敷かれた祐羽は、さっそくパンを頬張った。
うまうま♪と無意識に美味しいという謎の声が出てる事に気づかずに食べる祐羽の横で、九条はコーヒー、他の組員は静かに待機している。
パンを食べながら自分以外が何も食べていない事に気づいて祐羽は食事の手を止めた。
「あの、…皆さんは食べないんですか?」
九条が朝食を殆ど食べない事には慣れているが、他の組員はさすがにそんなことはないだろうと心配する。
すると、既に済ませて来ていると知った。
朝早くに済ませて、それから祐羽を迎えに来てくれたらしい。
「はい。私達は今仕事中ですから。どうぞお気になさらず」
そんな眞山の言葉に、それはそうとしても自分ひとだけ食べているのも…と考えてしまう。
どうしたものか、と考えながらコーンパンを口にする。
ここのコーンパンはコーンたっぷり。
苦手なカラシも不使用で、お子様に優しいお味なのだ。
まさかコーンを一粒ずつ渡す訳にもいかない。
あ、そうだ!
祐羽は預けてあったボストンバッグを中瀬から受け取ると中から飴の袋を取り出した。
遠足気分でお菓子を幾つか勝っていたのだ。
それを開くと「みなさん2つずつどうぞ」と中瀬に渡した。
これなら全員分あるだろう。
「ありがとうございます」
「いただきます」
眞山と中瀬の他に側に居て飴を受け取った組員も礼を言って「他のやつらにも渡してきます」と1人歩いて行った。
「九条さんもどうぞ」
それを見送ってから祐羽は別に手に出していた飴の小袋を2つ九条に差し出した。
受け取ってくれないかな?と思ったが、少しして取ってくれた。
食べはしないが内ポケットへと仕舞う九条を見て無性に嬉しくなる。
祐羽はニコニコ胸をほっこりさせながらパンの残りを大満足でペロリと食べたのだった。
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