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祐羽達を乗せた新幹線は一気に東海道沿いを駆け抜けていく。
車窓から見える景色はあっという間に都会のビル群を後に、民家が多く見える様になってきた。
「わぁ~凄い…」
都会住みで殆ど見ることがない祐羽は思わず窓に張りついた。
それも、こんなにも見渡す限りの広大な田に青々と繁る稲が目に眩しい。
東京では最近なかなか見かけない純和風の戸建ての家がドンドンと流れて行くのを見送る。
それを眺めるだけで楽しい。
「九条さん、見てください!あっちの方まで田んぼですよ。」
「そうだな」
「わっ?!」
窓に張りつく祐羽の横に九条の顔が並ぶ。
驚きに声を上げた祐羽が首を縮めながら見るが九条の視線は真っ直ぐと景色に向けられていた。
冷房の効いた車内で触れ合った九条の体温を直に感じ、思わず恥ずかしくなり口をムズムズさせながら再び窓の外を見る。
「あ」
すると外には富士山。
「富士山だ!痛…っ!!」
実はこうして新幹線の窓越しとはいえ生で見るのは初めてで興奮して叫んでしまうが、次に訪れた衝撃におでこを押さえた。
い、痛い~~~っ!!
興奮しすぎて前のめりになりすぎて窓へ見事激突したのだ。
おでこを両手で押さえているうちに富士山は姿を消してしまいガッカリする。
「何をしているんだ…。ひとりで漫才か?才能はなさそうだな」
九条は呆れた様子で溜め息をつきつつも直ぐに用意させた水に濡らしたタオルを差し出してやる。
「気をつけろ」
タオルを充て情けない顔で首肯く祐羽にそのクールな声とは違い、九条は卑怯な程にカッコいい笑みを浮かべていた。
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