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一瞬受け取ろうとしたもののやはり自分の財布から出さなければ意味が無い。 それに何でもかんでもお金を出して貰う訳にはいかないと首を振った。 「それは九条さんが使って下さい。僕は自分のお金ありますから」と財布から五円を取り出し顔の前で掲げて見せた。 「変なこところで拘るな」 そんな祐羽に九条が顔を近づけて耳にそっと優しく諭してくる。 「うっ、…すみません」 くすぐったさに思わず首を竦めた祐羽は頭をガシガシ撫でられた。 「フンッ、まぁいい。早くしろ」 後ろでは観光客が大勢順番を待っている。 「あっ、はい!」 賽銭を受け取らず九条が機嫌を損ねたかと心配したが、どうやら遠慮ばかりする自分に呆れただけで、怒ってはなさそうだと安心する。 祐羽は賽銭を入れ礼をして拍手をすると、手を合わせ目を閉じた。 チャリンと音が聞こえ、どうやら九条もお参りしている様子が伝わる。 何を願っているのだろうか。 隣に立つ九条の温かさを感じながら祐羽は神様に頭を下げた。 お願いばかりはダメだけれど、これだけはどうしてもと思ってしまう。 神様、お願いします。 どうか僕と九条さんが、ずっと仲良く過ごせますように…。 頭の中を九条と過ごした何気ない日常が、それから、ふたりがおじいちゃんになった姿も…。 宜しくお願いします、と長々と念を送った。 欲深い自分が嫌になるけれど、九条の存在は日々大きくなっていた。 だから…。 あまりにも願いが長い祐羽は、九条に肩を抱かれてその場を後にした。

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