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海の満ち引きというものは、人間の力ではどうしようもない。
神社を後にしてから祐羽は「あっ!」と声を漏らした。
テレビでやっていたパワースポットの『鏡池』を見忘れた!と気づきショックを受けていたが「潮がまだ満ちていて見えなかったぞ」という中瀬の言葉に、それなら…と諦めがついた。
「どっちにしても今からでは戻れません」
眞山の言葉に頷く。
そうだ。
限られた時間しかない。
夕方には明日のこともあるし、市内へ戻る必要がある。
「また今度観にくればいいだろ」
すると、九条がそう言ってくれる。
「え?」
また一緒に来ることを考えてくれているということだ。
「九条さん…」
嬉しさが沸き上がる。
九条さん、また一緒に来てもいいって思ってくれてるんだ。
祐羽は素直に嬉しさを表情に出して「はい」と頷きながら応えた。
しかし。
と、いうことは…
「でも、そうしたら今回は大鳥居まで歩いて行けないですね…」
そう漏らした祐羽に中瀬がスマホ片手に憂いを払拭してくれる。
「調べたら、あと一時間くらいしたら干潮らしいです」
どうやら満潮と干潮の時刻を調べてくれたらしい。
中瀬の言葉に祐羽は「本当ですか!?」と歓喜の声を上げた。
「あぁ。ほら…な?」
「おおっ、本当だ!」
スマホの画面を見せて貰い祐羽に笑顔が浮かび、それに対して中瀬も嬉しそうに笑った。
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