656 / 1012

20

そういうことで大鳥居へ行くのは後にして、少し休憩をしようとなったものの見渡す限り観光客で溢れ返っている。 目ぼしい店も大混雑しており、これでは入店するにもどれだけ並ばなければならない。 水族館もあるらしいが、それも待ち時間が物凄くて今回は行くことは時間的に不可能だった。 本当なら色々な場所を巡るのが理想だが。 「混んでますね」 どうしたらいいんだろう、と祐羽はポツリと溢した。 「商店街で少し見て歩いて、それから大鳥居へ行くのはどうでしょうか?」 そんな眞山の提案に祐羽は(なるほど)と頷いた。 祐羽が頷けば九条も反対などするはずもなく、一行は商店街へと足を向けた。 暑い為、商店街でも夏に嬉しい冷たい物が色々と売られており客が入れ代わり立ち代わりでアイスクリームやかき氷が怒濤の勢いで売れていく。 水分補給をするものの、やはりしっかりと冷え物を口にしたい。 思わず他の人が食べている様子を見て、美味しそうと思ったのが伝わったのだろうか。 「おい。食うか?」 「えっ?あ、」 「俺、買ってきます」 九条がそう訊くや否や返事も待たずに中瀬が買いに走り、早々に戻ってきた。 手にしていたのは苺ソースに練乳のかき氷。 祐羽がフレーバーといえば、たいてい苺なのを知っている中瀬はそれだけ祐羽と長い時間を共に過ごしている。 それは九条との時間よりも長い。 「ほら」 カップを渡されて戸惑いつつも「ありがとうございます」と受け取る。 道の端、人の邪魔にならない場所へ九条に立たされる。 「食え」 「あっ、でも」 自分だけという申し訳なさに眉を垂らすが、他のメンバーは誰もが要らないという。 そうなれば自分しか食べる人間は居ないので、祐羽は早く完食しようとパクパクと口に運んだ。 結果。 「バカか」 頭はキンキンするし体は冷えるしで、寒くてブルブル震える羽目に。 暫く九条に抱き締められ暖をとるのであった。

ともだちにシェアしよう!